倫理観ちゃんのブログ

最高の人生にする

bitter than coffee

コーヒーにはクリープを入れる派。砂糖はいらない。そういえばこの前バイト先で食べたコーヒーゼリーは、全く甘くなくてただ苦いだけの固形物、最悪だった。起き抜けに彼が淹れてくれるコーヒーはいつもブラックだ。‪苦くて美味しくはない。しかし彼が使わないのならば、きっとあの家にクリープは無いのだろう。家に泊まりに来る女のためにわざわざクリープを買うような律儀な男でない事は、もう知っている。多分。他の女の子のための歯ブラシやメイク落としが無くていつも安心するけれど、それはあたし以外に女の子が来ていないことの証拠にはならないのと、同じだ。そういうわけで、あたしは絶えず不安で押し潰されそうになっている。

 

電車の窓を流れる景色は灰色。天気は曇り。彼のインスタグラムをストーキングして知ったばかりの彼が好きなアーティストの曲をダウンロードして、哀愁に浸る。彼の聴いている音楽も、勧めてくれた映画も、全て手に入れた。手に入れた気がしているけど、実際のところ月額定額制、所謂サブスク。あたしはなにも手にできていない。勿論彼の事もだ。‬


‪例えば、会う予定が無しになったとか、そういう事であたしは捨てられたような気持ちになる。あたしの自尊心は砂の城。些細な事ですぐに崩れる。けれど彼は恐らく、逆の事があろうとも、射精する機会が1,2回減ったとしか捉えないだろう。そのような捉え方をお互いが出来ない時点で、あたしたちの関係はとっくの昔に破綻していたのかもしれない。勝負で言えば、あたしは彼に出会った瞬間から負けている。細かいところを記述すると、まだ寒さの残る春の夜、彼の最寄駅、彼の家までの道で手を繋いだあの時。‬「あ〜めっちゃ犯したい」って半笑いで彼があたしの頭を撫でた時から、射精した後もキツく抱き締めていてくれた今朝まで、ずっと、あたしは彼に敵わない。

 

通りがかり、俺が稼げるようになったら連れてってあげる、って言ってくれたお店のこと多分忘れられないけどいい?あたし、そういうのすっごく根深いタイプだよ。あたしたちの関係は、どう足掻いたってセフレと一括りにされるだけの関係で、当たり前だけれど未来はない。別れ際に交わす「またね」という言葉も確実ではない。約束をするなんて愚かだなあ、と流れる景色を遮断するように目を閉じた。

 

彼に会った後はいつも、決まって悪夢ばかり見るようになる。

はやく、はやく助けてよ、ねえ。

逃れるために他の男に焦燥的に抱かれるのも、本当に馬鹿にしか成せない術だなと呆れ返る。

 

コンビニで店員に怒られながら買った缶チューハイを煽った。柑橘系特有の苦味が舌に残って不快だった。あたし苦いのは嫌い。コーヒーも、恋愛とかも。