倫理観ちゃんのブログ

最高の人生にする

セックスは救済ではない

ベッドの上、全裸のあたしを見下ろしながら 顔と名前と性癖ぐらいしか知らない男が言う 「かわいいね」と「好きだよ」はあたしにとって呪いであると同時に命綱であることを悟った。いつもあたしは自分がこうなってしまったのを誰かのせいにしてきたけれど まあ一番の原因はあたし自身の弱さだ。そうやって一人で納得して悲壮感に浸ることを元彼に「お前のそういうところ気に入らないしウザいよ」と言われたことを思い出す。キレられる度に ごめんなさい、と泣きながら謝るあたしに放った「ごめんなさい、ごめんなさいって繰り返すのほんとうに嫌い」というヤツの言葉も思い出す。これはただの呪いだ。

 

ベッドの上、全裸のあたしを見下ろしながらあたしを犯す全裸の男は あたしが喘ぎながら漏らす「ごめんなさい」に興奮して息を漏らす。首を絞められるたび、内臓までぶっ壊れるんじゃないかってくらい膣の奥を突かれるたび、早くイけよ、と頬を軽くはたかれるたび、あたしは うわごとのように「ごめんなさい」を繰り返しながら まるで命乞いではないか思う。いつかこのまま殺されるのではないかと怖くなる。滑稽でどうしようもない。

 

ベッドの上、汗と涙でぐしゃぐしゃになった全裸のあたしを見下ろしながら必死で腰を振る男は 何度もあたしに「かわいい」と呟きながら絶頂へ向かう。あたしはその間ずっと 突かれた反射で出るみたいな惰性の喘ぎ声を出しながら早くこの地獄が終わることだけを願っている。別にセックスが好きなわけではない。どちらかといえばこういう暴力的なセックスは地獄だ。そう思えるのはあたしがまだ人間であることの証明なような気がする。今更何を言っているのだと自分でも思うが。

 

何度懺悔の言葉を口にしてもあたしはきっと救われない。許されたくて男に抱かれるわけではない。セックスは救済ではない。むしろ罰だ。対価だ。わかっていながらやめられないのはあたしが弱いからだ。

ごめんなさい、神さま、許して。

あたしは茹だるような夏とともに地獄に堕ちる。