倫理観ちゃんのブログ

最高の人生にする

セフレ未満の女になった話

Tinderをインストールして5分くらいで好みの顔の人とマッチした。好きを分散させるために相手になってチヤホヤしてくれる人がいればいいやあ、ってぐらいだったから、挨拶もそこそこに今日会える?って言ってきたその人をアホじゃないの?って思ってなんか理由つけて断ってまじで会う気なかったんだけどなあ、気付いたらホテル行く約束して待ち合わせしてた。

どこいるー?ってかかってきた電話越しの関西弁が混じった落ち着いたトーンの声に少しいいなって思った。スマートにコンビニ寄ってスマートにお支払いをされて部屋に着いて「探検しよ〜」とかっていろんな扉を開けたりして、なかなか手を出されなくて、そういう小細工いらないのになあって思った。あたしはそういうつもりで覚悟決めてきてるんだから、面倒なことはいらなかった。だって好きとかそんなんじゃないし。

ピッタリしたニットワンピを着てたあたしの腰におもむろに手を回して「やっぱめっちゃ細いね、スタイル良くて顔もかわいい」って言って頬を擦り合わせてきてそのままキスされた。ムードもクソもなくときめく瞬間もなくマジ一瞬で終わった。正常位でピストンされてるときに背中に回したあたしの手の冷たさとその背中の熱さの違いにびっくりした。好きでもないひと相手にこんなに喘いでる自分も、こんなに早く射精した相手にも呆れた。アホみたい、アホか。

お互いシャワーを浴びたら少し話をしてベッドで並んで寝た。ずっと寝てた。もはや寝ることがメインで笑う。「ひっついて寝てもいいですか?」って言ったあたしの頭をちょうどいい柔らかさで撫でて、「なんか赤ちゃんみたいな匂いする」って言うから「赤ちゃんじゃないですよ」って怒ったら「赤ちゃんじゃん」って笑って返された。悔しくて彼が寝てるときに頭を撫でて「寝顔赤ちゃんみたいでかわいいですね」って言ったら寝ぼけて「んん〜」って返ってきてやっぱり可愛くて悔しかった。勝てないなあって思った。

フロントからの電話で起こされて、あたしは洗面所で白いシャツのボタンを留める好きでもなんでもない男の姿をベッドの上からボーっと眺めていた。

思い返せばセックス以外で一回も手を繋がなかったな、思い返せば一回も名前を呼ばなかったな。会う前と比べて極端に減ったLINEに腹が立つから返信はしないでおく。SNSでも見つけてストーキングしてやろうかと思ったけど、名前の漢字も苗字さえも知らないし、ほんとになんも知らない、勝てないなあって悔しい。

可愛いとか好きとか泊まりに来てとか早く会いたいとかそういう甘い言葉が全部セックスの付属品だって痛いほどわかってる。どれくらいクズかもわかってる。好きになったら苦しいだけだってわかってる。だからあたしは絶対好きにならない、あたしは引っかからない、多分。でも彼氏の吸わない銘柄のタバコの煙とクシャってなった吸殻を忘れられそうにない。流されやすい自分が悔しくて、あたしは彼の啄ばむようなキスだけが好きになれそうにない。