あたしの好きなひとはみんな東京にいる
あたしの好きな お店も 街も 空気も 言葉も 全部東京には揃っている
首都高の横に並ぶガラス張りのマンションも 名古屋よりも少し早く満開になったピンク色の桜も 細身のスーツを着こなして気怠げに電車に乗り込んでくるサラリーマンも ここにいるのが当たり前みたいな顔して生活している東京出身の人間たちの余裕も 全部全部全部羨ましくて欲しくて大好きだ
あたしだって夜の渋谷で好きかもしれない男のひとの手を握ってスキップしたかった 好きな女の子と代官山でイキってランチしたかった 妬ましくって吐きそうだ
東京で出会う男のひとたちはみんな あたしのやっていることを否定しない ここにいればいいだけダメになれる気がするし ダメでも混じってしまえる気がする かと言って別に肯定してほしいわけではないのだが
東京で出会った男のひとたちが好きだ あたしのことを可愛いと褒めて抱いて 気をつけて帰ってね と言いながら玄関のドアを閉め仕事に向かうアッサリ感が丁度いいから きっと好きな女の子にはしないんだろうな と思えるような抱き方をしてくれる男のひとたちが好きだ 純度の高いあたしの好きや憧れをグチャグチャに混ぜてボヤけさせてくれるから
あまり迷わなくなった駅の構内を背筋を伸ばして歩く 綺麗なだけじゃやっていけないことがこの歳になって分かった 誰になんて言われようとあたしは強くて可愛い女の子なのだ
